イチロヲ

江戸川乱歩劇場 押繪と旅する男のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
子供時代に幻想的な体験をしている老人(浜村純)が、押絵の中にいる兄(飴屋法水)を捜すべく、老骨に鞭打ちながら東奔西走する。江戸川乱歩の同名小説をベースにしている、サスペンス映画。筆者は原作を読了済み。

死期が迫っていることを実感している老人(演者の浜村純は撮影時、80代後半)が、少年期の記憶が消失する前に「何とかしなければ!」と粉骨砕身する。少年期のモヤ~ッとした記憶と老年期の呆けた視点を、幻想譚のように交錯させていく。

登場人物の掘り下げ、時間軸の転換など、様々な脚色がポジティブに働いているが、現代の主人公が雑踏の中を彷徨うシーンで「周囲の人々がカキワリになる現象」が発生してしまう。ここでは「なんだこの爺さんは?」という周囲の反応を入れて欲しかった。

「抗うことのできない老化現象」と「死の恐怖から逃れるための行為」を、さらりと盛り込みながら、半醒半睡のドラマを紡ぎ出している。特別出演者では、山崎ハコの見世物口上が素晴らしい。
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