emily

屋根裏部屋のマリアたちのemilyのレビュー・感想・評価

屋根裏部屋のマリアたち(2010年製作の映画)
4.1
1960年代のパリ、祖国スペインを離れてパリの叔母の元にやってきたマリアは、叔母や彼女のメイド仲間たちと屋根裏部屋での暮らしを始める。同じアパルトマンの株式仲買人ジャンルイの元にメイドとして雇われる事となり、その仕事ぶりにジャンルイは大満足でやがて彼女に惹かれるようになる。と共に屋根裏部屋での暮らしぶりを知り、手助けしたり、彼女たちとも仲良くなり自分を解放していく。

 対照的な上と下の暮らし。上と言ってもここは屋根裏部屋。ネズミが居て、トイレも壊れてるし、シャワーすら使えない。時代設定は1960年代、丁度フランコによる軍事独裁政権下にあるスペイン。実際フランスへ渡りメイドとして働く人も多くいたことでしょう。フランスのマダム達がスペイン女性について話してる描写もあるが、コミカルタッチで全く嫌味を感じさせない。そこには批判的な言葉ではなく、ユーモアの範囲内で収まっている。

 上と下の暮らしは全く別の世界であったが、マリアが来てから、事態はゆるやかに変わっていく。メイド達同士の会話のテンポ感、パエリヤやフラメンコ、時代背景は暗くとも、彼女たちの間にはいつも笑顔があふれていて、友人たちを思い協力しあう姿がコミカルに描かれている。とにかくにぎやかでいつも楽しそうなのだ。そこにジャンルイ演じるファブリス・ルキーニが交わっていく。彼のキリっとしていた表情が徐々に緩やかになり、笑顔になり、妻に追い出され屋根裏の物置場で暮らすようになってからの清々しい表情が印象的だ。全く違和感なくマリアたちに溶け込んでいるのだ。彼を含めても彼女たちは全く変わらない。陽気な雰囲気が本当心地良くて、彼女たちをずっと見ていたいと思いました。

 ちなみに個人的に大好きなロラ・ドゥエニャスも出ています。マリアと主人の超えられない壁、メイド達の行為も一つの友人としての優しさにも見え、終盤前は少しトーンダウンしてゆっくりしたテンポになりますが、そこまでのテンポ感が爽快で、とても心地良いリズム感と個性豊かなメイド達の会話や笑顔が印象的。
emily

emily