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復讐 THE REVENGE 運命の訪問者のHALのレビュー・感想・評価

4.3
黒沢清の『復讐』二部作は観れていなかったので新文芸坐での上映は嬉しかった。黒沢清映画の中でも『蛇の道』『蜘蛛の瞳』がベスト級に好きなので、同じく哀川翔主演のこちらのシリーズはそこに繋がる要素があるのかなと期待していた。結果としては思ったよりもしっかりしたVシネの空気感があったが、物語が進行するにつれてそうした暴力にまつわる動機が衰退してどこか異空間を彷徨うことになるという黒沢清映画の世界観は通底していた気がする。

最後の海辺のシーンの異様な美しさ、清々しさは何なんだろう。銃を持って淡々と歩く哀川翔も海風がヒンヤリとしてそうな草原の緑もとても美しいのだが、それが美しいシーンであることをうまく理解できない。暴力に酔うこともできないのだ。中盤の工場での銃撃戦は独特の間合いで進んでいくが(銃弾が全然当たらない!)、ここはアクの強い悪役がいるので盛り上がるし、ボルテージが上がっていく哀川翔の表情がやっぱり冷めていて怖い。でも殺しの天使というほどには救われてないんだよな。『蛇の道』『蜘蛛の瞳』もそうだけど、暴力には勝利しても哀川翔自身の苦悩からは全く解放されないのだ。
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