TaiRa

天国と地獄のTaiRaのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
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前半と後半なら前半の方が面白い。山崎努は凄かった。

1時間近く室内だけで展開される部分は、シネスコ×パンフォーカス×入り組んだ動線で画変わりしないのに全く退屈しない。芝居、台詞にもユーモアがあって結構笑える。堅物に見えて動揺しまくる三船が誘う笑い。運転手の佐田豊や夫人の香川京子も良い。室内劇の圧迫感から一気に身代金受け渡し場面へなだれ込む爽快感。特急こだまでの伝説的な撮影は改めて凄い。一発撮りで芝居のテンションもやけに高い。後半の捜査パートは当時から言われてる事けど、仲代達矢がめちゃくちゃ過ぎ。こんなキチガイは死刑にすべし!という正義感が暴走してて異常。ヤク中に厳し過ぎ。黒澤の犯罪者断罪っぷりが極地まで行ってる。けど、山崎努のおかげか、犯人の青年に対して若干の共感もある。ラストは特に。『罪と罰』のラスコーリニコフをベースにしたキャラクターだから、黒澤としても思い入れがあったんだろうか。面会室でガラスに反射した二者を重ね合わせる演出は腐るほどあるけど、やっぱこれが一番キマってる気がする。あと山崎努のサングラスに反射する景色が4K上映だと鮮明に見える。闇の中に浮かぶサングラスの光が美しい。ドブ川の水面に映る姿で犯人が初登場するのも含め、反射が全体通して肝になってるね。
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