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天国と地獄のnagarebosiのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
4.9
もう、ただただ圧巻!傑作!

数多ある誘拐を題材にした作品の中でも群を抜く出来映え。

前半50数分間の濃密な人間ドラマ、人間の醜さをも晒けだす、まるで舞台劇を観るかのような緊張感から一気にあのスリルと興奮の名場面、そして「踊る…」でもオマージュされた、煙を含む後半の謎解きサスペンスまで、それこそ息つく暇がないほど見事に活写しています。ラストの面会は権藤もまた一気に天国から地獄を見た(或いは感じた)一人なのかもしれない、そんななんともやりきれない気持ちで幕を閉じる構成も秀逸。

シナリオが一分の隙もなく組み立てられ、撮影もスコープサイズを活かし縦構図で濃密な空気感を作り出してます。
役者さん達全員が素晴らしく適材適所。三船さんの厚、仲代さんの飄々としながらもキレ者刑事、山崎さんの病んだ狂気。
さすが黒澤監督!きっと、撮影中は楽しくてしょうがなかったんだろうなあ。だってこれだけのキャスト・スタッフだもん。

誘拐はもっとも卑劣な犯罪だと思うんですが(監督もそうだったようです)、子供を標的にすると更に怒りがこみ上げてきますね(私に子供はいませんけどね)。