ポンコツ娘萌え萌え同盟

ロイドの要心無用のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

ロイドの要心無用(1923年製作の映画)
3.6
再鑑賞。
三大喜劇王作品はキートン狂信者なのでロイドの映画は本作くらいしか観たことない。本作を魅了するといえばやはり時計にぶら下がるあの奇跡のカットとそのシチュエーションにあるだろう。
ただ本作を代表とする攀じ登るシーンはやはり本作には重要だ。

本作を見で思ったのは、
①「都会で働く青年の現実と田舎の彼女には見せたい理想の姿の乖離」、
②「無用心ではあるけれども人の目を誤魔化してなんとかする行動が多い主人公像」
③「やはり高所の撮影」
の3点である。
人の目を誤魔化すに関して本作のロイドのコミカルな動作にも直結するが、やはり特にそれを感じる会社に向かう場面で急患のフリして救急車に運ばれるロイドや彼が会社についてからの行動が光る。
理想と現実の乖離は言わずもがなである。

ただ本作の要となるデパートの高所を上ると言うのはこの二つの点にも関わる。まず命綱なしで登り、地上には多くの人間が彼の姿を見守る。全く逃げ場がないのだ。
それに命綱ないならば落ちれば確実に死ぬという危険性を思わせる高所のカットは無用心で途中で誤魔化すことができない、彼のキャラクター像の詰みっぷり。ただここで落ちてしまえば限界を向かえつつある理想はたちまち現実に完全に呑まれ悲劇と失望が広がるだろう。だからこそこのシーンは本作の主人公のキャラクター像としての危機であり、それに揺れる名場面だ。

とはいえ個人的に好きな場面は婦人たちがギュウギュウに詰め寄った売場の場面だ。忙しい最中にもドタバタコメディである本作のつよさがよく生きた場面でもあり観ていて面白い。