はぐれ

EUREKA ユリイカのはぐれのレビュー・感想・評価

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)
4.2
ずっと観たかった青山真治の代表作。見入ってしまって3時間半の時間があっという間。セピア調のモノクロ映像が今観ても瑞々しい輝きを放つ。

バスジャック事件で生き延びた3人のその後を追う物語。実家暮らしで親離れが出来ないバス運転手の中年の主人公も含めて深く傷付いた子どもたちのジュブナイルロードムービーを観ているかのようだった。そう、人間なかなか大人にはなれないのよ。

そしてその成熟したはずの大人たちは総じて醜い。精神を病んでいるバス運転手の弟に対して心無い言葉を平気でぶつけるその兄の塩見省三の憎たらしいこと。こんな自分の体裁しか考えられない大人になるくらいなら一生子供のままでもいいのかもしれない。

そんな大人たちに反して演出は、いや監督の青山真治はじっくりと腰を据えて子どもたちのささやきを一言も漏らさずに聞き取り彼らの傍らに寄り添ってくれる。まさにセラピストのような根気のいる粘り強い演出。3時間半もの上映時間もその誠意の表れ。時間でしか解決出来ない問題を短時間で描こうなんて土台無理な話。言葉に頼らない人間と人間の間合いをつぶさに観察する演出は好感しかない。

少女時代の宮﨑あおいの瞳。時折、手塚治虫の描く動物たちのあの慈悲深い目に見えてくるほど美しい。瞳の中だけに光を灯すライティングは惚れ惚れするほどのお仕事ぶり。
何を言われても何も言い返さずにグッと言葉を飲み込んできた主人公が最後に見せる感情の爆発は見る者にカタルシスを感じさせてくれる。見れてよかった😢
はぐれ

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