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EUREKA ユリイカのtntnのレビュー・感想・評価

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)
4.4
映画館で見れて本当に良かった。
聞きたくない声に耳を塞ぎ、相手に言葉を投げかけることを辞め、動作や行為に意味を読み取ることもできない。決してセリフが少ない映画ではないけれど、全編に渡って「話が通じ合わない」と「話が通じ過ぎてしまう」が繰り返される。「標準語」などと称される言葉の標準性は、方言によってその確固たる性質を奪われる。バスジャックの犯人とのやり取りを、会話のキャッチボールとはとても呼べない。
それでも矛盾や反省を承知で、「ばってん」「そんなことないよ」という言葉と共に相手に何かを伝えようとすることで、理解の淵の手前も手前の領域がかろうじて顔をのぞかせる。暗闇の中で壁伝に音を響かせることもまた然り。
シネスコ画面が雄大に切り取る大地は圧倒的スケール感で、同時にここまで広く世界を捉えるからこそ、それが断片でしかないことも強く感じる。序盤から確かに西部劇だなと思う箇所も山ほどあるけど、あのバスは決して馬ではなく馬車でもないことには注意したい。乗ってる人は、互いに顔を突き合わせないし、違う方角の窓を見る。
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