滝和也

惑星大戦争の滝和也のレビュー・感想・評価

惑星大戦争(1977年製作の映画)
2.9
地球に襲い来る
インベーダー!
国連宇宙局は、
嘗て建造を中止した
あの艦に全てを託した!

今こそ飛び立て!轟天!
金星大魔艦を打ち破れ!

「惑星大戦争」

嘗て世界のトップに立たんとした東宝特撮は、ハリウッドのアイデアと巨額な投資の前に過去の遺物として葬り去られようとしていた…。そのとどめを刺したのがスター・ウォーズですが、その直前に公開されたのがこちら…。かの作品公開前に一儲けしようとしたのか、わかりませんが、かなり慌てて作られたようです…。ただ…スター・ウォーズが公開されたらその差は歴然。スペースオペラを日本では作れなくなっちゃいました…。

東宝特撮の人気作、海底軍艦の宇宙版としてのリメイクですが、中身はヤマト色が強く、嘗ての宇宙大戦争や地球防衛軍の様な侵略モノにあたるストーリー。ですが…嘗ての東宝特撮作品にもアイデアやストーリーの面白さでも全く歯が立たないレベルで…(T_T) 

まずストーリーが全く雑な上、工夫の欠片もありません。海底軍艦や地球防衛軍、宇宙大戦争にある様なワクワク感の欠片もありません。特撮以外のストーリーがペラペラなんですね。また特撮に繋げるための兵器設定や敵の弱点を突くような設定も皆無と言って良い。

人間ドラマの希薄さ、敵に勝つためのカタルシスがほぼ無いんですね。出演者はかなり豪華なんですが、全く活かされていない。兎に角メインキャストが雑に死ぬんです…確かにヤマト、愛の戦士たちの前だから、参考にできないんですが…そのレベルにする事は可能なはずなんです。

主演に青春ドラマで一時代を築いた森田健作。ヒロインにはセクシーアイドルとして売り出し中の浅野ゆう子。彼女はかなり早熟で最初はこんな感じで売り出され、トレンディードラマで飛躍するのはこの10年位後です。また必殺シリーズで人気の沖雅也。棺桶の錠ですね。この後数々のドラマで大人気になりますし。そして子供たちのアイドル、仮面ライダーV3、ズバット、アオレンジャー、ビッグ1の宮内洋。

この若手を起用しながら…雑すぎる扱いに…残念すぎるストーリーに大減点してます。本多猪四郎や円谷英二が見たら激怒するレベルじゃないかな。更に音楽が軽すぎる上に何のフレーズも印象に残らないのでこちらも駄目。伊福部昭さんがいれば…まだしもでしたが…。

当時の邦画技術としてはかなり頑張っているんですね。東宝特撮伝統の操演を中心に。またそのセットも東宝特撮の中では頑張ってる。でもそれだけなんです。進化していない。ミレニアムゴジラシリーズまで全く進化していないまま進みますからね…。それはそれでレトロ好きな私みたいなファンは良いのですが、大人の一般受けは難しい。スター・ウォーズに踏み潰されてしまい…このプロットはずっと作られてない。ゴジラやウルトラマンのキャラクターものは別として…。

妖星ゴラスの池部良さんが艦長を努めていますし、平田昭彦さん、睦五郎さんもいて嫌いじゃないんですよね。睦五郎さんの声聞くとメカゴジラ出てきそうだし(笑)。あと…角の生えたチューバッカがいて…こいつも雑すぎますが。

東宝特撮スペースオペラへの葬送曲になった作品です。この後…スペースオペラではなく、宇宙パニックものとしてさよならジュピターがこの作品の特技助監督の川北紘一さんの特技監督で作成されますが、敢え無く撃沈します…。技術が追いつき出したのですが、こちらもストーリーが全く駄目…。特撮だからストーリーはいいやでなく、特撮だからストーリーが大事なんですよね…。
滝和也

滝和也