Monisan

影武者のMonisanのレビュー・感想・評価

影武者(1980年製作の映画)
4.1
観た。

意外に静かな始まり。この3人のやりとりの絵は観た事がある、有名なシーン。長いワンカットのやりとり、芸術的な画面内のレイアウト、一枚の絵画のよう。

圧倒されたのは兵や馬の迫力。
あれだけの兵の数がいると、ただ行軍しているだけでも画ヂカラが強い。騎乗のシーンはそのスピードも凄いし、戦で多くの馬が駆け抜ける様子も観た事無い強さ。

あとは色彩が豊か。実際の武田軍がこんなに鮮やかだったかは知らないけど、風林火山ごとに違う色味が鮮やかで美しい。

重臣達の着物も美しい色合いなので、ただ彼らが集まって座っている姿だけでもアートのように見える。
とにかく映像は本当に素晴らしい。今だと日本映画でここまでの予算をかけ、監督の要望(わがままともいうかもだが)を叶えられる作品はなかなか難しいかもな。

物語は少し意外な部分もあった。
早々に親方様が銃弾に倒れてしまう。
この後の家康と打ち手との実況見分みたいなシーン面白かった。
勝手に影武者がその後、順応して無双する話を想像していた為、下賤の影法師が駄目だめで家臣や側近達に罵られているのを観て、そりゃそうかとなった。
竹丸にいきなり見抜かれるのは良かった。子供は忖度しないしな。その後、懐いていく流れも良いんだけど。

徐々に竹丸の父でもある、諏訪勝頼が自身の評価の低さから主張を強めたり、影武者にあえて皆の前で指示を仰いだりする。この辺りは歴史を調べてみると理解は深まるのかも。

信玄の愛馬からの落馬により、あっさり側室達にバレてしまう影武者。ボロの身なりで追い出される際に、竹丸に会いたい、と言い、呼び捨てを叱責される。切ないシーン。

そして、長篠の戦いなのかな。
山のように待てない勝頼、信長軍に銃で散々なまでにやられていく。
その様子を見守る影武者。
敗戦の後の多数の兵士の遺体。その中を苦しそうにもがく馬達。このシーンがとにかく執拗に描かれる。馬が苦しそうなのが観ていられなかった。この時代だし、黒澤だし、本当にお馬さん達を…と思うと余計に辛かった。

そして、がむしゃらに槍一本で敵に向かい呆気なく銃で撃たれた影武者が川に風林火山の旗を見つけ、取りに行こうともがく。カメラが引いて、驚くほど早い川の流れに影武者は流されていき、終わる。

役者は錚々たるメンバー。
織田信長役の役者さんが印象に残った。雰囲気はあるんだけど…少し下手?なんか不思議な感覚だった。他は皆さんお見事としか。

とにかくカット、カットをじっくり観せてくるので長い。持たせるだけの画力はあるんだけど、少し疲れた。

エンドロールには、コッポラ、ジョージ・ルーカスの名もあったな。
黒澤明、脚本・監督
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