カンヌ映画祭グランプリを受賞した黒澤10年ぶりの日本映画。
色彩美、様式美、壮大さと日本映画らしからぬスケールを持っているが、それにとらわれるあまり、人間描写は希薄。晩年の黒澤作品に共通する弱点が美点を上回った最初の作品と言えるだろう。
影武者という題名だが、その影武者の人間性の掘り下げ方が甘いし、信玄の死を隠しとおそうとする家臣たちに反発していく信玄の弟、勝頼の心の移り変わりもあまり伝わってこない。
結局、人間ドラマは壮大な映像の添え物でしかない印象を受ける。3時間の大作だが、映像で見せる部分が多く、2時間で十分終わる内容である。