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ギャングのpikaのレビュー・感想・評価

ギャング(1966年製作の映画)
4.5
台詞なくスピーディに展開される脱獄劇からオフィスでの断絶、バーでの銃撃戦に長回しの捜査口上など、映像先行なインパクトで端的に人物紹介をし、瞬時に心を掴まれ150分というボリュームながらも時間を忘れてジックリと堪能させてくれる。

早すぎもせず野暮ったくもなく絶妙なリズムでテンポ良く、丁寧に描写を積み重ねていくことで説明なしに語っていく。
誰がどこへ行って何をしてという下手打てば凡庸でつまらない画面の羅列になりそうなところを、舞台と人物の画的な秀逸さやカメラワークの抑揚、ドアの開閉による流れるような場面転換など飽きる隙なくグイグイ魅せる。
人物のアップの切り返しの最後にカメラが動くことで緊迫感を生んだり、事件そのものではなく前後の描写で駆け引きや裏切りなどの人間関係による緊張を娯楽に仕上げてしまったりと、洗練された演出は極上。

襲撃の前に座って地面を這う蟻を見ていたり、電車やバスを乗り継ぐシーンや何気なくフラフラ散歩しているシーンなど、ギャングという映画の中でしかお目見えできない特殊な存在を、我々と変わらぬ同じ人間だと気づかせるようなハッとする演出が素晴らしい。
仕草や声の調子の変化で相手への信頼や不信を表現し、顔を合わせる部屋で事前に確認するシーンなど、観客に鑑賞の醍醐味を与える丁寧な気配りも見応えを増している。
見つめ合う2人の切り返しから始まるクライマックスは、ラストの余韻まで全秒痺れる名シークエンス。泣ける。
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