滝和也

愛情物語の滝和也のレビュー・感想・評価

愛情物語(1984年製作の映画)
3.0
原田知世主演第二作。

飛ぶ鳥を落とす勢い
だった角川映画の
総帥である角川春樹が
自らメガホンを撮った…
故にカルトムービー
作品に…(笑)

「愛情物語」

ミュージカルスターを目指す仲道美帆(原田知世)は義理の母(倍賞美津子)と二人暮し。毎年捨て子だった彼女のもとに誕生日に花束が送られてきていた。彼女は送り主をあしながおじさんと呼び、本当の父親からと信じていた。美帆は送り主の宛先を調べ、金沢に向かう。だが、送り主のはずの篠崎(渡瀬恒彦)は全く分からないと言い…。

この作品…ある意味カルト的と言うか、素人臭さと情熱のみで形成されていて、明らかに映画作品としては劣るのだが、その不気味な自信が見え隠れする上、作品としての目的事態を達成しているのが恐ろしい…。

ウィキを見てみると、原田知世デビュー作の時をかける少女を見た角川が出来の良さに嫉妬し、自らメガホンをとったとある。さすが二代目のボンだけに簡単にそれができる訳だが…正直角川春樹に才能があるとは思えない…。大作、天と地とを当時劇場でみた際、あまりの稚拙さに呆れ返った記憶しかないし、これも酷い。

ここからは予測に過ぎないが…
「うちの知世を更に売り出すなら…確かバレエができたよな、フラッシュダンスみたいな奴はどうだ。後、ミュージカルならあしながおじさんを入れてさ。赤川さんの小説もあるしさ…」と言う声が聞こえてくる(笑)

故に本当の父を探す話に脈絡なく、原田知世のガンガン踊るシーンが差し込まれ、ミュージカル的な要素が組み込まれている。オープニングは更に酷く長々と原田知世のいないチンケなウェストサイドストーリーの様なミュージカルシーンから開幕する。(ラストへの前振りてまはあるのだが…。)

しかも父親探しのストーリーの結末は大したものでなく、どうにもつまらない。ただ疑似親子の渡瀬恒彦とのロードムービーとして、金沢から四国、そして、長崎へと展開していく辺りは渡瀬恒彦が存在感で支えている。

また原田知世を見せるためだけに、カット割やカメラワークは意外に凝っていて、原田知世が歌うオリジナルがロードムービーの中にも組み込まれていてミュージックビデオのよう。この変なこだわりも素人臭さなのだが…。

中でも採石場でのダンスシーン…バックで石を割る渡瀬恒彦。前で踊り捲る原田知世と言う凄まじいシーンが構築されている。更に途中突然ロードムービーから、サスペリアの様なホラーテイストが叩き込まれ、作品の色合いが変わったりする…(笑)

因みに他のダンスシーンでは汚れた英雄で有名な角川お抱え外人歌手ローズマリー・バトラーの意味不明すぎるチョットマテクダサイと言う歌がかぶる…(笑)

つまりだ…。ストーリーバランスや面白さは排除され、原田知世を見てほしいと言う監督の情熱だけが、成功している。

それも原田知世の透明感や純粋さがあってのことだし、彼女のダンス力あってのことだ。特にダンスは切れが良すぎ。当時のイマイチな振り付けでも全力で踊る彼女が素晴らしい。(ちとわらえるのだが…)まぁ、作品の点数の全てが彼女の点数と言っていい。だがそれはアイドル映画として正しい。彼女を皆が見に行ったからだ。彼女以外はどうでもいいのだろうから。

果たしてこれを80s傑作選に入れて良いのか悩むところ。上げればツッコミドコロはまだまだまだまだあり過ぎる。だが、80年代はアイドル映画が多く作られた時代であり、角川映画のヒロインたちはそれを代表する作品群であるのも事実。故にまぁ入れとこう(笑)
滝和也

滝和也