半兵衛

白昼の女狩りの半兵衛のレビュー・感想・評価

白昼の女狩り(1984年製作の映画)
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曽根中生が独自の映画美学を究極的に突き詰めてしまったような作品。風紀を乱す女性を粛清するというお題目のもと暴行や殺人を繰り広げるグループとその一派に当初は保護(一方的に、しかも理由は不明)されていたのにカメラマンと関係を持ったと知るや殺戮の対象にされた主人公の女性という、二つの視点が全く交わらないのでお客さんが期待する加害者と被害者がぶつかり合いヒートアップしていく展開が全くなく終盤唐突に大殺戮が巻き起こるのに困惑。しかも合間に暴行グループの日常や変なギャグが挟まれるのでこの映画のコンセプトは何なんだとますます戸惑うことに。

そしてラストのゼロ地点のような結末に我々は「映画なんて無なんだ」という監督の心の叫びを強制的に聴くことに。でも映画の深層を知ったところで見てるこちらはただただやりきれないだけだし、こんなものを有り難がる崇高な心なんて持ってはいないので結局珍味扱いで終わってしまうことへ。日活がお蔵入りしたのも、表向きは「過激な暴行のため」とはしているものの実際は観客への挑発行為が酷すぎることへ懸念を示した可能性が高い。

暴行グループのリーダーを演じるなぎら健壱が全く似合っておらずミスキャストなのも問題だったりする、実際映画を見てるとなぎら自身がどこか戸惑いながら演じているようにも見える。

後輩である相米慎二の『セーラー服と機関銃』を意識したかのようなエンディングが寒過ぎる、しかもそのために公道であんな違反行動やるかね。

ちなみに20年くらい前ジェネオンで日活ロマンポルノが続々とDVDとしてリリースされたときラインナップに入っていたものの、結局ソフト化はされずじまいだったが映画を見て納得。
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