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クリスマスのその夜にのTJのレビュー・感想・評価

クリスマスのその夜に(2010年製作の映画)
3.5
クリスマスのノルウェーの小さな町の群像劇。とびきり大切な日、愛する人を想う夜は、色彩豊かでハッピーなものではなく、雪国の冬らしく静かで暗い。誰にも言えずつらく悲しい夜を迎える人たちが、各々の"場所"へと帰るオムニバスストーリー。

妻と離婚し我が子に会えない男、不倫をする男女、出産を控えた若い夫婦、そのお産を見届ける医師、異教徒と過ごす少年、帰る家のない中年の男など。主要な登場人物もろくに名前すらはっきりしない、しかしそれがクセの強いキャラと行動を際立たせます。

サスペンス?と疑うような静けさと怪しさは、ただあっけらかんと明るいクリスマスムービーでなく、聖夜らしくない悩みに苦しむ人たちをフォーカスし描くため。それこそこの作品の魅力で、映画好きの大人のためのクリスマスショートといったところでしょうか。

お子さんと見るのにはお勧めできませんが、伏線が明らかになり無関係と思われた人たちの話が交わりはじめた頃には、お〜!と楽しめ、見終わった頃にはなんだかほっこり。特にラストがよくてじんわり余韻の残る、そんな作品です。
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