すずす

太陽の中の対決のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

太陽の中の対決(1965年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

マッカーシーの赤狩りにあった社会派の監督マーティン・リットがポールニューマン主演で描く、異色の西部劇。エルモア・レナード好きのタランティーノは『ヘイトフル・エイト』で、本作の基本設定を借用するなど、映画マニアにファンが多い(NHK BS放送にて鑑賞)。

19世紀末、西部開拓も終わりに近づいたアリゾナ。アパッチに育てられたジョン・ラッセル(ポール・ニューマン)はアメリカ先住民と山で暮らしていたが、メキシコ人の知人メンデス(マーティン・バルサム)から、養父が下宿屋を遺産に死去した為、町に住むように助言をうける。
ラッセルは、先住民居住地の顧問フェイヴァー夫妻、下宿の管理人ジェシー、強引に乗り込んできたグライムズなどと共に、駅馬車に乗り込む。御者を務めるのはメンデス。
道中、フェイヴァ―が先住民の食料を横領して稼いだ大金を所持していた為、強盗が現れ、グライムズはその首領だった。ラッセルの機転で、金を取り戻し、逃げるラッセルたち。強盗一味はファイヴァ―の美人妻を人質に、金との交換を要求してくる。白人を嫌悪するラッセルは、先住民を愚弄した美人妻を助けることを一度は拒否するが…。

冒頭から血なまぐさい展開で、悲劇は頂点に向かって突き進む。但し、旅立ちまで45分と、時間を使いすぎ、展開がスローなのが難点。しかし、駅馬車に集った人々の人間模様、つまり、運命のいたずらによる呉越同舟から切なすぎる結末は古典的な作劇術だが、タランティーノが借用するのも納得の出来栄え。嫌味な白人たちは生き残り、正義感の強い”男(原題:Hombre)”に訪れる悲劇は、シェイクスピア的な逃げ場のないものとして描かれます。

しかし、50~60年代、多くのハリウッド西部劇が先住民を描いている『ネヴァダ・スミス』で半分ネイティブアメリカンの血を引く役を演じたスティーブ・マックイーン。『許されざる者』ではオードリー・ヘップバーン、バート・ランカスターも先住民を演じている。ハワード・ホークス、ジョン・ウェインの西部劇がインディアンを悪役として描いた反省をうけ、多数の映画が見られる。本作もそんな中の一作、知られざる名作映画で、ハリウッドの奥深さを感じさせてくれる。ハリウッドに吹いた自由の風が、後にポール・ニューマンの更なる異色西部劇『明日に向かって撃て』を生んだきっかけにも思えてきます。
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