まさなつ

ルシアンの青春のまさなつのレビュー・感想・評価

ルシアンの青春(1973年製作の映画)
3.9
フランスのルイ・マル監督作品。

第二次世界大戦末期のフランスの田舎。ルシアンという若者は、病院で住込みの仕事をしている。休暇で田舎に帰るが居場所がない。仕方ないのでレジスタンスに入ろうとするが断られ、街を歩いている時にたまたまドイツ警察(ゲシュタポ)に捕まり、仕事を手伝うことになる。

フランスのナチス協力者の若者を主人公にした珍しい?作品。
警察手帳という権力を得た青年は、パリから逃げてきたユダヤ人家族を知り、その主人には偉そうな態度をとり、娘に恋をする。

権力をかさにきた青年の行動は、嫌な感じと不器用さと痛々しさを同時に感じる。偉そうにしても幼さが出てしまう。
そもそも彼は、レジスタンスに入ろうとしたのも、祖国愛や家族を守るためというのではなく、家にも仕事にも行きたくないからだし、ナチスに協力したのも、酒飲まされて、村のレジスタンスリーダーの話をしてしまったからで、自分の意識で何かをしたのではなく、流されるままにな感じ。

ナチスに占領されていたフランスには、熱血的なレジスタンスばかりでなく、彼のような人も結構いたんではないかということを、ルイ・マルらしく冷静に淡々と描いてます。きっかけによって彼みたいになってしまう怖さを感じます。

主人公に同情はできないですが、これもまた戦争の悲劇です。
まさなつ

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