【案外古風な映画】
見ていて、アイルランドからアメリカにやってきた貧しい移民の日常が丹念に描かれている一方、おとぎ話的な筋書きでもあるな、と思いましたね。
それは言うまでもなくマテオの存在があるからです。途中までは危険そうな人物に見えますが、実は・・・・という展開は、怪物かと思ったら優しい宇宙人だった、という映画とよく似ています。この映画のなかに『ET』が出てくるのは、そうした意味合いをこめているのではないでしょうか。
マテオの存在が重要なのは、映画がああいう形で(ネタバレになるので書きませんが)終わるのですから、なおさらです。というか、あそこを見ると、きわめて古風な物語展開だと言いたくなる。
そう、この映画は実際は古風なのです。むかし、庶民が貧しくて当たり前だった時代にはこういう設定や筋書き、そして最後には・・・・・という締めくくり方もありがちだったはず。
出産に際して入院して色々あると医療費が3万ドルもかかるアメリカ。アメリカの医療保険制度が先進国とは言えない杜撰なものであることは、その後マイケル・ムーアの『シッコ』で明らかにされましたが、この映画にはそうした欠陥がさりげなく描かれていたわけで、単に見て感動していればそれでいいという映画ではない、と私は思いました。