ダイナ

ドッグヴィルのダイナのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.7
訳ありの女性を匿うことになった鉱山町ドッグヴィル。貧しくも生計を立ててきた町人達は戸惑いながらも彼女と交流を深めていくものの徐々にエゴが剥き出しになっていく姿が本作で映されます。

底なし沼にじわじわと沈んていくようなストーリーの魅力もさることながら注目したいのは「舞台」です。本作はロケ撮影ではなくスタジオ内でチョークや小物だけで表現された町を舞台としています。犬や茂みは実際に存在せず「あるもの」として劇中人物達は扱い、家の壁は地面に描かれたチョークの仕切りで表現。一室で不穏が発生する傍ら、他の室内では日常生活を送る人々、「同じ画面」にそれらが映されるという異常な映像演出。箱庭を覗き見る神のような視点で町の出来事を鑑賞させる作りです。このような舞台にも関わらずフィクションをよぎらせず緊迫感と陰惨な印象を刻みつけるのはキャスト陣の真に迫る演技の素晴らしさ。

時間が進み不穏な空気が増していく章構成はまるで火のついた導火線を見ているような感覚。3時間ワンシチュエーションながら濃密。文学調なナレーションによる状況・心情の説明の言葉回しは小説を読んでいるような没頭感でとても良かったです。道徳の狂気。
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