あんびー

ドッグヴィルのあんびーのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
4.4
初トリアー作品にして既にお腹いっぱい…。

舞台上に簡易な線を引いて、建物の仕切りが存在しない上から嫌でも住民達の表情や動きが常に俯瞰的に映し出され、役者とナレーションだけのシンプルな構成なのに最後まで飽きない綿密なシナリオが本当に素晴らしい。

住人とグレースの温かな交流を前半に引き立たせることで後半のどん底に突き落とすような展開を際立たせ、啓蒙や対話で人は善い方向に導くことができるという希望を力と矯正で真っ向から否定される展開は本当に辛い。一方で観ている側はドッグヴィルが抹殺されたことに爽快感すら感じ、重厚な物語を通して人の悪意について「多くを学びすぎた」グレースを追体験させられる。
それはこの作品が何か考えを改めるきっかけを与えるのではなく、現実とはこういうものだというある種悪意を持って1つの事実を叩きつけられるような無慈悲さを持っているが故で、監督の作品が鬱映画と称される要因なのかもしれない。
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