Kei

ドッグヴィルのKeiのレビュー・感想・評価

ドッグヴィル(2003年製作の映画)
5.0
ラース・フォン・トリアー監督の映画を初鑑賞。
3時間という長丁場でかつ舞台のようなセットであったため観始めた当初は最後まで観ることが出来るか不安だったが、終盤にかけて物語に引き込まれていったため最後まで無事鑑賞することが出来た。
人間の本性を描いた本作品だが、作品の前後半で登場人物が"変わっていく"ところが怖く感じた。
"変わっていく"と言っても実際には登場人物自身の"本性"は何一つとして変わっておらず、登場人物の心の奥底にある欲望や醜い部分が露呈しただけなのだ。
物語の最後に描かれていた、主人公が「周囲の環境によって善い心を"失ってしまった"、環境による"被害者"たち、弱い人たち」に対して下した決断は、他の作品ではあまり見られず、爽快なものであった。
どんなに普段善い人でも環境が変わると別人のように倫理観がない人になってしまうが、そうした人は果たして究極的には善い人なのか、悪い人なのかという問いや、"悪"に対してどのような態度を取りそして対処すべきかという問いに切り込んだ、非常に興味深い作品だった。
演技に関しては、ニコール・キッドマンの演技がとても上手かったと思う。

気に入ったセリフ
「自分には高度な倫理観があるから人の罪を赦してやるなどという傲慢な考え方は他に思い当たらん」byパパ
→社会的な制約が無くなった時に人間が最終的に行き着くのは悪なのだから(性悪説)、人間が悪に成り下がらないように環境を整える必要がある一方で、環境要因であれなんであれ既に悪事を働いてしまった人にはそれ相応の罰を与えるべきだということ。綺麗事をいくら言っても世の中はこうした考えに基づかないと回らないし崩壊する。実際に現状はこの考えで世の中は回っている。それゆえにこの考えには同意できる。
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