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ガール6のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ガール6(1996年製作の映画)
3.8
 新進気鋭の女優の卵のジュディ(テレサ・ランドル)は多くのオーディションを受けていたが、失敗続き。マネージャーのマーレイ(ジョン・タトゥーロ)からの紹介で、売れっ子監督クエンティン・タランティーノのオーディションを受けることになったが、笑顔でオーディションを受けた彼女に、タランティーノは冷淡に胸を見せろと吐き捨てるように言う。その姿に我慢ならなかったジュディは、モニターカメラの前で渋々脱いだ後、オーディション会場をあとにする。千載一遇のチャンスをドブに捨てたことにマネージャーは呆れかえるが、彼女はエージェントもやめ、フリーになって女優のチャンスを目指す。コンピューター教室のチラシを巻くも、一向に生活が楽にならないジュディは、求人情報から稼げる仕事だというテレフォンセックスの募集を見つける。家庭的で母親のようなボスのリル(ジェニファー・ルイス)にガール6と名付けられた彼女は、「セックスだけではなく、相手の話に耳を傾け、親身になって味方になろうとするのが成功のコツ」とリルの講習を受ける。

 一向にシンデレラ・ドリームに近付けない女性は、男たちの欲望のはけ口になると同時に、彼らの心の叫びを親身になって聞いてやる。ある者は母親の病気に悩み、顔も見えない声だけの相手に、思いの丈をぶつける。今作に出て来る女性たちは一見、社会の底辺にいるようなテレフォン・セックスのオペレーターだが、実は相談して来るような社会的地位のある男性の方が幼稚に映る。隣の部屋に住むジミー(スパイク・リー)は野球狂で、古い野球カードやスポーツ・グッズで一儲けしたいと夢想しながら、現実には何もしていない。ジュディの元亭主ジョー(イサイア・ワシントン)は彼女に未練たらたらながら、盗み癖が抜けない。そんな呆れた男たちを尻目に、ジュディは人の悩みを聞くことに天性の才能を発揮し、自身の芸の肥やしにする。メタ・レベルで70年代のブラックスプロイテーションを揶揄したフォクシー・ブラウンならぬラブリー・ブラウンという狡猾なキャラクター像は、男を踏み台にするしたたかな女性像を高らかに宣言する。SEX産業の末端に従事したジュディは皮肉にも人生の引き出しを増やし、シンデレラ・ストーリーを手にする。めくるめくようなヘア・スタイルとカラーリング、そしてファッション。Madonnaの出演以上に、少し淫靡なPrinceの音楽にやられる。
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