青豆

欲望の翼の青豆のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
4.3
“脚のない鳥がいるらしい
脚のない鳥は飛び続け、疲れたら風の中で眠り、そして生涯で唯一度地上に降りる
それが最後の時“

とうとうわたしの人生にもウォン・カーウァイ作品を観る時期が訪れたのかもしれない。
何年も前に【一人/ウォン・カーウァイ祭】のようなものを開催して代表作をまとめ観したことがあるんだけど、その時は「トニー・レオンと金城武色っぽいワ…勿論ジュード・ロウとキムタクもね」くらいしか感じることがなく、とりわけ花様年華に関しては自分の中でどう消化していいのかを、未解決事項として抽斗に入れたまま放置していたのだった。

本作では特にスーに感情移入することとなった。平穏な人生に突然現れて、何の責任もなしに心を奪っていくようなロクでもない男に惹かれて振り回されてしまうのには、悔しいが共感してしまう。
そんな時自分が、ミミのようにどんな時も自分に正直に、怒ったり泣いたりと感情を露わにすることができたらどれだけ楽だろうかと思っていたけれど、ミミ側の人間にはミミ側の人間なりの辛さがあるのだと知った。
だからこそ“肝心なことは忘れない“とヨディが最後に明かしたのには救われるものがあった。

額に滲む汗や雨に濡れた髪、肌の重なり合いなど、体温のぬくみや湿度が伝わってくるような独特な映像が美しい。
そしてやっぱり「レスリー・チャン、そしてアンディ・ラウ様色っぱいワ…」となってるんだけど、ウォン・カーウァイ監督ってずば抜けで男性をセクシーに撮る才能があるよね?
ここ数年の人生経験が、彼の作品を理解するのに役立つと嬉しい。

“彼を忘れるには、あの最初の1分から過ぎたすべての時を忘れないと“
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