Azuという名のブシェミ夫人

欲望の翼のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
4.3
ウォン・カーウァイ監督フェスを絶賛開催中。
大好きな作品達を見返していく中、レンタルが出来ずに未見の作品がいくつか・・・その中の一つがこの作品で購入に踏み切ったんだけど買って良かった。
ほんとに良かった。

切ないのもまた青春。まさに“青い”若者たち、そして時代。
でも青臭いだなんて思わなかった。
登場人物達のそれぞれにすれ違い続ける想いは切なくって甘くはないけれど、とても瑞々しく感じられる。
象徴的に使われる時計の時針・分針・秒針みたいに、きっと彼らが生きようとする速度は各々違っている。だから重なったと思ったらまた離れて行っちゃうんだな。
取り戻せない時間、忘れられない時間。
いつかあの人の人生とまた重なり合うことがあるのだろうか・・・そんな風に想いを馳せながら生きていくんだ。

続篇を作ろうとしていたようなので終わり方に未完成感があるんだけれど、またひとつ時間が動き出すという意味では却って“終わらない”のが良かったんじゃないかって思えた。
それにこの世界観はちゃんと後のカーウァイ作品達に受け継がれてるから。
レスリー、マギー、アンディ、ジャッキー、カリーナみんな魅力的にキャラクターを演じてた。
トニー・レオンはちょっとしか出てこないので、彼目当てに観るという方はご注意!

カーウァイ作品から感じるこの特有の湿度がほんとに大好きだ。
本来であれば不快なのであろう熱気がいつもとっても羨ましく思えるんだよなぁ。
夏に肌をじっとりさせながらまた観る。何度も観る。