エディ

裏街のエディのレビュー・感想・評価

裏街(1941年製作の映画)
3.7
妻帯者への愛を貫くために日陰で生きる人生を選択した女の悲しみを描いた名作。この映画が出来た当時では革新的とも言える禁じられた愛だったのだろうが、現在では主人公の行動はそんなに珍しいパターンではなくなっている。その意味で、愛を先進的に描いた作品かもしれない。
シンシナティで一番人気があった主人公レイは、ふとしたきっかけで当地に出張中だった銀行マンのウォルターに会って恋に落ちる。お互い真剣な愛だったが、運悪くお互いの気持ちを伝えられず離れ離れになってしまう。その後月日が流れレイは服飾デザイナーとしてNYで生活を送っていたところ、ウォルターに再会した。レイは独身だったが、ウォルターは既に結婚し子供もできていた。。。

最初は運命的な純愛だったのに運命のいたずらのようなすれ違いで恋が成就しなかった二人だが、年を経るごとに不倫関係を続けようとするウォルターの身勝手さが表情に出てくる。友人の必死の説得やレイの幸せは微塵も考えないウォルターの身勝手さに愛想を尽かし何度も別の場所での生活を始めるレイだが、その都度ウォルターが現れて、関係の復活を要求するのれレイが折れてしまう。
結局、主人公レイはウォルターの家庭や仕事に支障が出ないように日陰者で徹する生き方を選択してしまうのだ。最初はレイに共感していたし、その不幸な邪魔の入り方に同情をしていたが、途中からは彼女の優柔不断さにイラついたし、友人エドと同じく彼女を突き放してみるようになってしまう。

明るい家庭を築くのが夢だったレイが日陰者で生きる道を歩む過程は丁寧に描かれているが、自分がレイの立場だったらこういう選択はしない。ただ、世にこのような立場の人が大勢居るのは事実だし、敢えて不幸で辛い道を選択し自身の不幸ぶりに酔っているような人も多い。
なので、彼女の発想は映画が作られた保守的な時代では斬新的だったが、今でも通用するこの映画は先進的だと思う。
観終わったあとで、寂しく、そして苦々しい思いにすらなる悲しい映画。
エディ

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