三隅炎雄

関東果し状の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

関東果し状(1965年製作の映画)
3.9
シリーズ4作目。トラック荷台謎の鶴田機関銃乱射から鶴田組事始め式「漢になりたい 漢で生きたい」の大唱和へ続く豪快極まりないオープニングに、まず度肝を抜かれる。
新紡績工場建設をめぐる東京と神奈川の任侠連合同士の対立を描く話で、紡績工場の女工たちを搾取する悪党が河津清三郎、対する昔気質の親分が村田英雄でその下にいるのが鶴田浩二、劣悪な労働環境に抗議する女工たちのリーダーが藤純子。藤は第1作『関東流れ者』では廃娼を街頭で訴える女性解放運動の闘士であった。
映画は典型的な着流し任侠映画のガマン劇として快調に進んでいくが、最後の出入りになって突如天保水滸伝化、それもダイナマイトにライフル日本刀入り乱れての両派大激突、二百三高地と任侠時代劇がないまぜになったような奇天烈アクションが展開して、小沢のサービス精神というか、あまりにデタラメな作劇に顎が外れる。殴り込みが屋内から路地そして表通りと移動して集団時代劇を想わせた前作『関東破門状』の趣向が更に拡大し、この時点で映画は着流し任侠映画の完全なパロディになっている。
考えるにこの作品、金のことしか頭にないので言葉の筋道は通っている悪党たちに対し、主役の鶴田は国のため女工のため云々の理屈が所々飛躍がありすぎて屁理屈に近い、いや屁理屈で、善悪の差はその程度のものさとドライな視点がまた、映画をいっそう野太く面白いものにしている。
三隅炎雄

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