硫黄島の戦いを描いた映画と思いきや、現代劇だった。
終戦後も硫黄島を戦い、生き残った男の奇妙な戦後を振り返る。実話を元にしている。
終戦からわずか14年での公開。とんでもないリアルなディティールが積み重ねられていた。
軍服の破れ方、死体の描き方、暗い洞窟でマッチをつけないと何もわからない描写。
泥水をきちんとすする。
戦争下におけるある男の二面性。自分が生き残るために戦友を見殺しにしようとする傍らで罪の意識に苦しんでいる。
生き残ってしまったことへの後悔の念から見殺しにした戦友の妹を養い、罪を償おうとするも妹に恋心を抱いてしまう。
善行をしているつもりが、自分の欲望を満たしていたことに気づいた男はついに自殺してしまう。
生き残ったもう1人は、過去を綺麗に忘れ、今を生きようとしている。
「戦争を思い出させるような余計な真似しやがって、俺はきっと忘れてやるぜ、忘れて世の中、やり直さなきゃ気がすまねえ」
戦後、このような気持ちで生きていたのか。
日本人のほとんどに戦争体験があった時代。「生きているだけで儲けもん」このような気持ちが高度成長期をもたらした一因になったのだろうか。
音楽の使い方がとても日活っぽい。激しいバイオリンで泣かせにくる。