子持ちのカイロレン

日本侠客伝 昇り龍の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 昇り龍(1970年製作の映画)
3.0
 監督が山下耕作に交代したシリーズ10作目。前作と同じく「花と龍」が原作。これ以前にも同原作を映画化した作品は5作あり、この後にも加藤泰が続く。どんだけ人気あるんだ「花と龍」。山下耕作監督はこれ以前にも「花と龍」を2本作ってる。みんなどんだけ好きなんだ。
 物語は前作を踏襲しており、続編というよりリメイクな印象。健さんと藤純子の恋模様に焦点を絞った展開。出会ってからすぐ結ばれる二人。それを理解させる一枚画の強さ。その他シネスコに映える密な集合場面に力の入りようが窺える。
 健さんの妻は星由里子から中村玉緒に交代。前作の星由里子も損な役回りだったがマキノ監督の情感込めた演出で別れの場面は持ってった。今作ではほぼ放置。そりゃ藤純子の方がいいよ。劇中ずっと怒ってるし。でもちょっと可哀想。殴り込み前の別れの場面もあっさり。単に男に都合いい女に。藤純子は引き続きマキノ監督仕込みの美しい重心の移動や首の動きを披露してるが、制御する人おらず少しやり過ぎたんじゃないだろうか。マキノ監督じゃないとその辺の見極めは難しいだろう。その他マキノ監督作との違いは、目立ったコミックリリーフが不在で仲間達の顔が印象に残らないこと。あといつもより生々しい殺陣。監督の素質かプロデューサーの意向か。やっぱり祝祭的な感覚もあったマキノ監督版の方が好きだなぁ。なぜ日活にマキノ監督を放り出して、同じ物語を作り直したんだろう。