喜連川風連

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの喜連川風連のレビュー・感想・評価

4.0
作家性大爆発。

前半の艦隊決戦は宇宙戦艦ヤマト(主砲が回転するシーン、船の下部の色が赤色、戦闘時の席配置)
後半は2001年宇宙の旅(提供されるご飯、モノリスの形のゼーレ、赤い丸)

媚びて序・破を作った後に、やりたいものをやる!これぞクリエイターの鏡!
と言いたいところだが、説明と娯楽のバランスはいつだって難しい。

破が好きな人ほど、絶望に叩き落とされる鬼のような展開。

破が王道脚本だとしたらQは映像先行映画。
見たい映像、やりたい表現が先に来ている。
個人的には両方とも好きだが、それを同じシリーズでやるのだから、恐れ入る。

そして、綾波レイだけを救おうとしたセカイ系の代償を本人に支払わせる。
本当にシンジくんに優しくない。

エヴァに乗らせてくれ!と頼むシンジと
アニメを描かせてくれ!と頼む庵野秀明の姿が重なる。
だが、一緒に戦ってきたネルフ(ガイナックス)の仲間たちは遠くへ行ってしまった。

だが、それでももう一度、ガイナックスを復活させようとした庵野秀明と、シンジのネルフが重なる。

ネルフ(ガイナックス)というブラック企業で働く、理不尽を視聴者は一緒に味わうのだ。

14年後と葛藤。
エヴァンゲリオンが自身の手から離れて大きくなってしまった庵野秀明自身の葛藤とも重なる。

そして破の予告編が、14年間の戦いをダイジェストで描いたものだったのだろう。

予告編ではプチサードインパクトと、ネルフ関係者の逮捕、マーク6とサードインパクト(失敗)、アスカの復活などが描かれる。

この14年間の戦いの描写を面倒に思ったのか、省かれているため、置いていかれた感がすごい。

だが、この置いていかれた感覚はシンジくん(庵野秀明)の気持ちの追体験でもあり、あえてそうしたのだろうか?

さらに14年間分の描写をしようとすると、また完結まで10年はかかってしまう。

庵野さんもいい加減エヴァンゲリオンシリーズから離れたいのだろう。
このままでは、エヴァしか作られせてもらえない作家になってしまう。

ここでも、エヴァンゲリオンに乗ることが、存在証明になるシンジくんと重なる。

そして、誕生したのは、お客を信じ、突き放した表現。

だが、解説サイトで予習しないと専門用語が多すぎて無理。

昨今、邦画では滅多にない媚びない映画に乾杯。

やはり庵野さんは
2001年宇宙の旅と宇宙戦艦ヤマトがやりたかったのだろうか?
喜連川風連

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