カレクック

風の歌を聴けのカレクックのレビュー・感想・評価

風の歌を聴け(1981年製作の映画)
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大学時代の映画の授業の先生が大森一樹さんだった。その時はゴジラの監督という認識だったが、しばらくしてこの『風の歌を聴け』を初めて観たときは、なんだこれはと悪い意味で震えた。村上春樹の原作に愛着が強すぎたのもあるが、こういういわゆるアート系映画を観たことがなく、楽しみ方がわからなかったからだろう。

それからおよそ四半世紀を経て、多少は増えた映画鑑賞経験に支えられたからか、だいぶこの映画の趣を味わえるようになったと思う。最近ゴダール映画を観始めてからというもの、その影響がいかに大きいかを思い知るようになったが、この作品も間違いなくそういうものの一つだと思う。

小林薫、真行寺君枝、巻上公一、坂田明という素晴らしい顔ぶれの中、特に光っていたのは室井滋の若さとキュートさで、これは最初に観た時の印象と変わらないのだから面白い。

そういえば、主人公の部屋に積み上げられたレコードの中に『ジャックスの世界』と『風街ろまん』を見つけた。今ならちょっと憚られるチョイスかもしれないが、当時は音楽好きだが邦楽をあまり聴かない大学生が唯一持っているレコード、という感覚としてジャストだったのだろうか。同じ頃20代だったはずの叔父もはっぴいえんどが好きだったらしい。
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