皿鉢小鉢てんりしんり

地獄の門の皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

地獄の門(1980年製作の映画)
3.3
最高傑作である『ビヨンド』と比べると、狂ったイマジネーションの炸裂は物足りない。随所に丁寧なストーリーテーラーとしてのフルチが残っているんだけど、そこは脚本自体が面白くないので、逆に足枷になっている。それでも随所に見所がある作品にはなっていて、決して嫌いな作品ではない。ファビオ・フリッツィの、どんな画面でも必要以上のスケールを感じさせてしまう劇伴にだいぶ助けられてるとは思うが……

前半は『死霊伝説』っぽい小さなところからゆっくりと世界が滅んでいく様を描いているけど、別々の登場人物の話が細切れに出過ぎて、ちょっと散漫。
エンジンがかかるのは、若造が恋人の親父に勘違いでドリルをぶっ刺されるあたりから。文字通りスイッチが入ってしまうことで、これから起きることを察してしまう。くどいぐらいの切り返しサスペンス演出でドリルが近づいてくることで、先端が鮮明に見えてくるのがすごく嫌な感じ。フルチのことだからてっきり目玉にぶっ刺さるものかと思った。
蛆虫が窓から降り注ぐショックシーンも、引きの絵で見ると雪のように見える、というギリギリの美学をやってのける。

地下墓地の蜘蛛の巣とか、何気ないけどああいうのをやれるイタリアホラー映画の美術はきっとすごいんだろうな。本物の蜘蛛の巣じゃ絶対ああはならないわけで。
髪の毛ガシッと掴んでそのまま頭皮を引っぺがすあの即物性はロメロゾンビそのものなんだけど、やってることは至極ゴシック、というのがイタリアなのかな。倒れた死体の脳みそをネズミがこぞって齧るのもいい。