明石です

地獄の門の明石ですのレビュー・感想・評価

地獄の門(1980年製作の映画)
3.8
神父の首吊り自殺という背徳的行為によって「地獄の門」が開いてしまい、死者との境界線が失われた街に、あちら側の世界の住人たちがワラワラとやってくる話。相変わらず超難解な(というより支離滅裂な笑)シナリオに、目を覆わずにはいられない残虐描写のゴリ押しは、これぞフルチ印といった感じでした。

とにかく多い顔のアップや、キリッという音が聞こえてきそうなくらい執拗にくり返されるカメラ目線、そして怪異の正体が全く明かされないまま連投される残虐シーンの長回し。作ったんだから見ろ!!と言わんばかりの徹底した潔さは見ていてとても気持ち良い。

そして登場人物たちに降りかかる暴力には首尾一貫性はなく、BLEACHの瞬歩ばりの瞬間移動をするゾンビたちや、窓を開けると突如吹き荒れてくる嵐に乗って部屋に舞い込む無数のウジ虫たち!それから、死者なのか生者なのか判然としない綺麗なお姉さんに頭をえぐられ、脳みそをぶちまけられた死体に群がる鼠、、なんだこれは!!そしてドリルで脳みそを貫くシーンは(なぜそれが必要なのかは永遠に置いておくとして笑)会心の出来で、これを1980年にSFXだけでやり通したことが信じられない。本当に穴を開けてるようにしか見えない、、ルチオ・フルチが凄いのか、イタリアホラーに受け継がれる情け容赦のなさが凄いのか。

そして全編を貫くシナリオはもちろん理解不能で、生き埋めにされそうになった女性を助けたことから彼女と懇意になり「死者の街」となった街を救おうとする探偵が主人公で、彼の捜査によって謎が明かされていくどころか深まるばかり笑。中盤以降で、その街がもともと魔女の処刑場所だったという話が出てきたりするのだけど、だから何?というのは依然として分からず、そして何がどうなって呪いが解かれたのかも最後まで(真剣に)見た上でもやっぱり判然としない笑。

とはいえ、旅館に現れた無名の旅人を謎の集団が拷問にかけた上でリンチ殺害し、その呪いのせいで人が死んでいくお話だった『ビヨンド』を思えば、今作はまだ親切な方なのかもしれない笑。ルチオ・フルチの映画にストーリーの納得感を求めるのは、ダヴィンチに早く走れというようなものなのかもしれない(多分)。

地獄の門というと、地下から漏れ出た天然ガスによって半世紀以上燃え続けているというトルクメニスタン?の観光地を思い出すのですが、本作の原題は”City of the Living Dead”と、ロメロのゾンビ映画の続編であってもおかしくないような何の変哲もないタイトル笑。『地獄の門』って、粋な邦題だったんだなあ、、
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