櫻イミト

オペラ座の怪人の櫻イミトのレビュー・感想・評価

オペラ座の怪人(1962年製作の映画)
3.0
ハマー・プロ版オペラ座の怪人。テレンス・フィッシャー監督の「妖女ゴーゴン」(1964)の前作。

映像が鮮やかで極めて美しい。フィッシャー監督ならではのどこか品の良い“オペラの怪人”だった。

“怪人”の設定は原作やロン・チェイニー主演の決定版(1925)とは大きく違っている。顔面の傷はある事件による後天的なものであり、悪人ではなく悲劇的音楽家として描かれている。その個性は面白いのだが、シナリオ全体には穴が目立った。まず劇中で起こる殺人の動機が不明瞭なこと。そして真の悪役の顛末が描かれないこと。この二点は致命的な欠落であり、何らかの理由でカットされたのかと思わずには入れられない。

ただ、ハマー・プロのホラーの中で最も製作費がかけられたとのことで、美術衣装はとても見ごたえがあった。個人的に“下水道のアジト”が大好物なのだが、本作は理想的なアジトだった。

深く考えずに、オペラ座の怪人をフィッシャー監督演出で楽しむには悪くない一本。
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