アヴァロン・ベイの女学園の卒業パーティーで、学生のローズマリーとボーイフレンドが何者かに惨殺された。
犯人不明のまま数十年が過ぎ、久しぶりに卒業パーティーが再開されることになるのだが…。
『ハロウィン』(78)に触発されて手掛けられた異常連続殺人鬼映画の1本で、ジョセフ・ジトー監督による残酷シーンが話題となったスプラッター映画。
80年代のスラッシャー映画を代表する傑作ホラーです。
謎の殺人鬼が軍服姿で、農業用フォークや長剣で冷淡に殺戮を繰り返す様が圧巻。
似たような作品の中に埋もれずに済んだのは、不気味な殺人鬼のビジュアルと、強烈な特殊メイクのおかげでしょうか。
この作品が上々の出来栄えだったことから、サビーニ&ジトーのコンビは『13日の金曜日 完結編』に起用されることになります。
ちなみに完結編はシリーズ中、1番好きな作品です。
この映画の原題は『The Prowler(不審者)』。
タイトルに全く捻りがない感じも80年代のスラッシャー臭ぷんぷんで素晴らしい。
実にオーソドックスな展開だけど、良く出来ていると思う。
だがパーティ会場で次々に男女が殺されて行く展開は、これぞスプラッタ・ホラーの王道ともいうべきで、意外性はない。
本作の見どころは、サヴィーニ大先生の容赦ないスラッシャー描写。
男女の恋人カップルを二人まとめてピッチフォークで串刺しする冒頭シーンから、凄まじいショッカー演出と鮮血スプラッター光景が続々と登場、強烈なインパクトを与えてくれる。
「脳天から顎までナイフぶっすー」的なサヴィーニ印の残虐シーンを存分に堪能できます。
また本作を語る上で欠かせないのは、本編に登場する殺人鬼プロウラーの独特の風貌だろう。
軍服に襤褸で顔を隠した衣装に、殺人鬼のシルエットを強調するライティングで彩られた姿は不気味で、外見から面白味を感じさせる記号的なキャラクターとしての魅力と、観客に恐怖を与えるホラー映画の主役としての魅力を併せ持っている。
しかし肝心のシナリオは薄っぺらく、テンポも遅い。
随所で勿体つけて、88分の尺を埋めるのに必死な感じ。
主人公が保安官に電話で連絡を取るシーンも、受付の太った男の面倒臭そうに電話を取り次ぐ様を延々と写したりして、かなり間延びした印象になっている。
また、驚愕のラストみたいな売り文句だったけど、あまりのショボい終わり方に逆に驚愕した。
そもそもストーリーが穴だらけ。
重要そうなキャラに見えて、ぶっちゃけストーリーの上では居ても居なくて全く変わらないような人ばかり。
理由もなくヒロインの腕を捕まえようとするシーンなんて、どう考えたってただの尺伸ばしだし。
殺害シーン自体も中盤の見せ場なのに、最後まで放置される被害者がいたりする。
さらに、ラストに犯人が誰なのか判明するんですが、殺人を犯した明確な理由はまったく説明されずに投げっぱなし。
なんとなくは「こんな理由なのかな?」ってのは思いつくんだけど、如何せん劇中で語られないものだから消化不良気味。
あとローズマリーがなんかビッチくさい。
第二次世界大戦中、ローズマリーが戦地へ赴いた恋人へ宛てて別れの手紙を書くんだけど、内容が、
「貴方を待つのは疲れた。私まだ若いし、新しい恋人と幸せになりたいから許してちょ。もし無事に帰ってこれたなら、またお友達になりましょうね♪」
って。
祖国の為に血を流し、ボロボロになりながらも恋人に会うことを夢見て帰って来たのに、当の恋人はいつ帰るか分からない兵士を見限って、他の男とチチくりあっている。
夫が出張とか単身赴任したら、絶体浮気するタイプにしか見えなかった。
とはいえ、『ローズマリー』という邦題とともに死体に添えられた薔薇がロマンチックな80年代スラッシャームービーとしてはまずまずの出来なので、鑑賞する価値はあるんじゃないかな。