隙のない美術、これしかないというくらい計算されたカメラワーク、光、おさえこまれた演技、時間がゆっくりと流れているようでいてしかしだれない演出とシナリオ。どれも素晴らしく、キアロスタミはやっぱりキアロスタミだ、巨匠と言われるだけのことはある、と思わざるを得ない。
しかしストーリーが非常に辛く、というよりぶっちゃけると、大変胸糞が悪い。はじめから最後までだれひとりとして幸せにならないばかりか、あのラストは、これまで見た映画の中で五本の指にはいるほど衝撃的であるにしても、その衝撃がずっと心の中で嫌な影を落としている。
