高井戸三郎

ライク・サムワン・イン・ラブの高井戸三郎のネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

一夜が明け、大学に向かう車のフロントウィンドウに映る空と高架といい、支配するように高梨にのしかかるでんでんといい、腰掛ける奥野の横のテレビに映る高梨といい、写される半透明なガラスがいちいち大好き。

終局の加瀬の爆発には、びっくりはさせられるけれど、しかし、それは大学の入口での邂逅から、ながく燃え続けているのを固唾を飲んで見守っていた導火線が切れた瞬間なので、なんとも言えぬ快感でもあるのだ。
階段を下る足音の、刻みの速さが心地よい

自動車修理工場での加瀬は身のこなし声の出し方何もかもほんとに良くて、顔を殴ってしまった社員への声の掛け方、肩の触り方、つなぎ姿も最高にエロいし、車を招く手の捌き方、「ォラィォラィォラィォラィ…またヤっちゃったんすか笑」、サイドウィンドウに肘をかける仕草、後部座席の明子に話しかけるときの一瞬仕事モードがオフに=大学前でのモードに戻り、すぐにオンになって料金を断りお礼とよかったらランチの誘いを入れるところ、「オーラーイ、オーラーイ…ハイオッケーです」

笑えると滑稽とかという意味でなく、あまりにユーモラスな奥野の転び方、これはおそらく、奥野が運転中に居眠りしてしまうhumorに由来していて、ユーモアがズレ=横滑りということなら、奥野はずっと、滑るかのような足取りで歩くか、車に乗って文字通り、水平に滑っているのである。
高井戸三郎

高井戸三郎