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ライク・サムワン・イン・ラブのodyssのレビュー・感想・評価

3.0
【老人にとってのエロス】

キアロスタミ監督が日本を舞台に、日本人俳優を使って作った映画。

エッチなバイトをしている女子学生はまあ月並みかなと思いましたけれど、祖母が田舎から出てきているという設定で、そこで根っこみたいなものが表現されている、らしい。らしいというのは、祖母は電車で一時間くらいの場所に住んでいるようなので、田舎くささが何となくピンとこないから。これが、飛行機で1時間ならまだ分かるんですけどね。

中卒で一本気で多少暴力的な男も、まあありがちかと。昨今はこういう男はDV(ドメスティック・ヴァイオレンス)だとかで犯罪者のレッテルを貼られていますが、男にはもともとこういう部分があるわけで、今どきは優しい男が流行っているからあまり日の目(?)を見ませんが、実際にはよくあるタイプだと思いますね。

で、問題は元大学教授である老人。エッチなバイトの女子学生を、もてあそぶのではなく(或いは、すぐさまもてあそぶのではなく)一緒に食事をしたりして楽しもうとしている。彼は八十代という設定だから、おそらくあっちはもう出来なくなっているんでしょう。出来なくなっているけれど、それでも若い女の子を欲する男の本能は残っているから、ああいう形で女の子と交流しようとする。つまり、性行為の代償ですよね。でも若い女の子にはその辺が分からない。

映画全体の構図としては、若くて一本気な男にはエッチなバイトをしている女子大生の気持ちが分からず、女子大生には八十代の老いた男性の気持ちは分からず、ということなんでしょうけれど、私が年齢的には老人のほうに近いので、そちらに視点を置いて見ていました。でも、私なら八十代になって出来なくなってもやはり川端康成の『眠れる美女』ふうに若い女とエッチに接触したいと思うのは、枯れ方への想像力が足りないからかな(笑)。

でも、エロスって観念ですから、これもエロスではあるんですけれどね。
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