このレビューはネタバレを含みます
ーー2回目ーー
やっぱりラストのカタルシスが異様。
なるようになるさケセラセラの行く末
ーー1回目ーー2023.12. レンタル
ビル・エヴァンスの曲に由来するロマンチックなタイトルとは裏腹に物語は辛辣だった。
一言でいうなら相互不理解を描いた映画ではないかと思う。
物語冒頭のでんでんは「お前の考えていることは分かるよ」と理解したふりばかり。
一見健気に思えるお婆ちゃんは、いきなり当日に電話してきて一方的に待つという明子の事情を何一つ鑑みない身勝手さ。
元教授のお爺さんは寄り添うふりをするが、一般的に優しいとされる行動をしているだけで、本当に相手のことを考えてはいない。樋口に「経験を積めばわかる」と意味のない言葉ばかりを投げかけて、自分で火種を撒いといて明子には「なるようになる」なんて無責任な言葉を残す。
明子は理解されようとしないし、樋口は見ての通りDV気質で短絡的に人にレッテル張りしてしまう。あまりにも相互理解に遠い状況。
明子がこの絵に似てるって言われるけど、私は似てないと思うと言う。それは理解の欠乏による自己認識と他者認識のズレそのものかもしれない。
たぶんムカデの話も理解の問題に帰着するんだと思う。
この映画を見ながら特にお爺さんに苛立ちを感じていたので、ラストはかなりのカタルシスがあった。
会話劇っぽいからなのか一時間くらいの短い映画に感じられた。
DV彼氏と健気なお婆ちゃんに同じ冷徹な目線を向けるキアロスタミが素晴らしい。