ヤギ

ル・コルビュジエの家のヤギのネタバレレビュー・内容・結末

ル・コルビュジエの家(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

いきなり壁を突き破ってくる隣人は、さぞ厄介に思えるだろう。話が通じづらく、服装も話し言葉も自分と違っていれば、尚更だ。
しかし、本来「他者」とはこちらが接しやすいように型にはめられた都合のいい存在ではない。もっと居心地が悪く、気まずい存在でもあるはずだ。ときには、工事音のようにノイジーだろう。
裕福だが堕落し、他者への敬意を欠いた主人公とその家族に対して、隣人は荒っぽく不器用ながらも誠実で、正義に準じた行動を取る。壁に穴を開けた理由も「あまっている光を分けてほしい」という、極めて人間らしい理由だった。そして、この「光」はいろいろなものに言い換えられるだろう。たとえば、金、知識、土地、etc……。
本作は暗闇に光が差すシーンで始まり、光が暗闇に閉ざされるシーンで終わる。ここに所得と文化資本の格差によって植え付けられた選民的な意識、それに基づく人々の分断が象徴的に表されている。これがブエノスアイレスだけの話ではないことは明白だろう。
自分は「他者」と出会ったとき、はたしてどのように接することができるだろうか。そんなことを考えさせられた作品。
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