ユカリーヌ

蝉の女 愛に溺れてのユカリーヌのレビュー・感想・評価

蝉の女 愛に溺れて(2012年製作の映画)
3.8
【過去に観た映画】2011.5.28

郷田マモラ原作の
短編漫画「蝉の女」の映画化。

思いのほか、エロい!。
まあ、売春宿「蝉丸」が舞台なので、まぐわいのシーンはあるとは思っていたけど、
こんなに多いとは!
青い果実をもぎとりたい派! 向けのエロス。

でも、あの郷田マモラの絵柄から、こんなエロい
映画に仕上げるとは。

漫画では、遊郭「蝉丸」がメインだったけど、映画では、その五年前にさかのぼって、
夏子の高校時代をメインに描いている。

登場人物それぞれのバックボーンを描き、ふくらませ、より深みのある物語にしていてる。

萩原流行や下篠アトム等ベテランの配役も作品に奥行きをもたせ、いい味わいになっている。

母親の男である「父親」という名のクズ男に無理矢理、「女」にされ、借金のカタに遊郭に
売られる夏子という、昭和な雰囲気漂う設定。

心を殺して、空を見つめながら、男に抱かれる夏子。
愛想もなく、ただ身体を提供するだけのマグロ女だが、
リピーターも多く、夏子はその世界で生きていく。

でも、その中で希望の光を見つけるのだが……。

最低20分の時間の中で、金を払った男が、
「首から上はダメよ」と言う女を抱く。
抱くと言うよりは、排泄なのか。
性を売ること、性を買うこと。
女の性、男の性について考えさせられる。

ラストはとてもせつなく、泣ける作品ではあり、
私の大好きな劇画「愛と誠」的なのだ。

だから、本来なら号泣する展開なのだが、エロい部分が多すぎて、気持ちがそっちにいってしまい、せつなさに感情が入り込めなかったのが残念。
……って、どんだけエロさに没頭してたんだか、私。

いや、ちょっと、その「愛」が唐突であったから、
せっかくのラストの演出がちょっとカタチだけになって
しまった感があるのだ。

タイトルの「愛に溺れて」というのは、ちっょと適切じゃない
気がするしね。

遊郭の五回も不美人キャラ フクコちゃんのAVエピソード
は笑ったが、ちょっと悲しかった。

ダメ男はどこまでいってもダメ男だが、
女を悦ばせるのだけは上手く、時に愛おしく、
女に包容されたりもする「人間」だが、
ダメ人間は、人の心を持たないから、「人間」じゃないね。

メイキングでは、一番悪役の人が一番おもしろくて、
素顔はいい人っぽい、
逆に一番誠実な役柄の人が、素顔はそうじゃなさそうだったり。
映画って、虚構で、あくまでイメージの世界なんだなと
いうことを改めて感じた。
それだけ、リアルさより異質な世界観があふれている
映画だったってことなのかも。
ユカリーヌ

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