クリーム

アシュラのクリームのレビュー・感想・評価

アシュラ(2012年製作の映画)
3.9
とにかく暗く異様な雰囲気で、絵も不気味。人間と獣の違いは?人間らしく生きるとは?を問われる良い作品だと思います。時間も短いし、観やすかったけど、テーマが食人。気持ち悪い面もあるので、万人受けしないのが残念です。
※本作は1970年、週刊少年マガジンにて連載されたジョージ秋山さんの漫画が原作です。極限状態におかれた人間の生き様を描き、有害図書に指定された問題作なのだとか。私は全然そう思わなかった。時代が早すぎて、理解されなかったのかも知れない。

平安時代末期の飢饉の中、産まれた赤ん坊。母親は空腹に耐えかね、その赤ん坊を喰おうと火にくべるが、激しい豪雨で生き延びた。たった1人で獣のように育ち、人肉も食べ、生きながらえて来た。8歳になったその子は放浪の僧と出会い、助けられアシュラと言う名前を貰った。その後も心優しい若狭と言う娘と出会い、人間らしい感覚を身に付けるのだが…。



ネタバレ↓



アシュラは、地主の息子を殺してしまい、地主に谷底へと突き落とされ、若狭に助けられます。若狭のお陰で元気になり言葉も少し覚えました。しかし、若狭の恋人·七郎に嫉妬し、怪我をさせてしまう。 若狭に「ひとでなし」と呼ばれ、アシュラは、生まれて来た事に絶望する。そこに再び坊さんが現れ、絶望がお前を人に変えたと言う。
絶望と言う感覚が解ったのは、アシュラが人間らしくなったと言う証。
そして、飢えに苦しみ衰えていく若狭。 餓死寸前の若狭に「馬肉」を持ってきたアシュラは若狭に食えと言うが若狭は「人肉を食ったら終わり」だと拒否。馬肉だと言っても信じない。そんな時、地主達がアシュラを襲って来た。追い詰められ、橋に火を付けられ谷底へと落ちて行ったアシュラ。 数日後、七郎は若狭の遺体を運んでいた、その横をすれ違ったアシュラの目には涙。
完全に人の心を持ち涙も流すアシュラ。
更に数年後アシュラは坊さんになっていた。おしまい。

餓死寸前なら、人は人肉を食べます。戦時中は、実際に食べた兵士達がいる。ギリギリの状態なら、誰かを殺してまで食べなくても死体の肉なら食べるかも知れない。人から、何も教えられず、アシュラが生きる為に人肉を食べて来た事は動物として当たり前。この物語は、究極の選択だけど、私達は、何かの命を奪いそれを食べて生きている。食べれる事を感謝して生きなければならないと訴えていると感じました。また、失った信頼(若狭の)は、取り返すのが困難な事や異質な者への人間の残虐性等も短い尺の中に詰め込まれています。
人間性を得たアシュラは、それにより苦しみも覚えたが、人として生きる喜びも覚えたのだろう。お坊さんになっていたのは、そう言う事だと思う。

*あちゃん、良作だよこれ!ありがとう♡*
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