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恋人よのseapony3000のレビュー・感想・評価

恋人よ(1964年製作の映画)
5.0
家族養う倍賞千恵子と快活な工員輝雄のラブロマンスなのかと思いきや。社員とバイト5人の出版社の人事めぐってドロ沼。チャキチャキいつもの千恵子の実は内心不安なモノローグや、女を武器に世渡りする吉村真理の暗い生い立ち匂わせ、べらんめえ岡田英次と倦怠期の画家の妻との歪な愛情やら、ここでもキャラ強しの瓶底メガネの浜村純。生まれたときから不運の影背負った無我坊や。すやすや眠る弟の横で頑張って勉強してるけどトンカツの手土産で沢村貞子に貰われていった妹のみつぼう。二本松嘉瑞監督、脚本も二本松嘉瑞。誰なの二本松監督。詰め込みすぎなのか、絶妙に謎なバランス、みているそばからどうにもこうにも変な映画で喜びで気を失いそうになる。誰とでも寝る真理さんの哀しいモノローグも素晴らしいし、千恵子と輝雄のSEX寸止めにうつ伏せる輝雄のシーンも素晴らしい。生きる辛さを遊園地で発散するシーンも。歩く途中でトンネル入ったときの反響する声や周り音にもハッとさせられた。借りた櫛握りしめて自死した無我を人一倍憐れむいきなり登場の浪花千栄子は東京の下宿のおばさんなのにいきいき大阪弁でいつもの千栄子はん。遺影を囲んで悲しんだ後は各々がほんの少し人生に希望を持って笑顔で話している流れもこれが人間、図々しさを描く繊細さ。松竹ホームドラマの根底を感じたり。でもとにかくへんな映画の印象のが強くてほんと嬉しいこんなの観られて。映画の勢いに当てられてまったく消化できてないので、またいつか正気でみなきゃという気持ちでいっぱい。出番は案外少なかったけど、吉田輝雄の絶好調な可愛さ凝縮されまくってた。

岡田英次の妻役の富永美沙子さんよかったー。
番匠作品にも出ていたね。
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