けーはち

神秘の法のけーはちのレビュー・感想・評価

神秘の法(2012年製作の映画)
3.4
テレ玉の放送を視聴。宗教団体「幸福の科学」肝いりで作られたアニメーション映画だが、いや、なかなかの“珍味”だった。

★物語は、とある独裁国家に征服されつつあった世界を奇跡で救う宗教的寓話のようなもの。その独裁国家はナチス・ドイツの鉤十字によく似た国旗、中国の簡体文字によく似た言語を使う架空の東アジアの大国で、宗教を弾圧し軍事力で世界を蹂躙している。それに対抗する国際平和団体のリーダーとなるのが「幸福の科学」大川隆法総裁お気に入り(曰く、自分の前世の声に似ている)、子安武人演じる主人公である。

★主人公はブッダ、救世主イエス・キリストの生まれ変わりであり、古代インカ文明の王であり、地球の神ということにまでなっている。神というのも、異星の先進文明が人々にそう言わしめたもので、元々は乙女座から来た宇宙人であり、魂を人間の肉体に憑依させて輪廻転生するとか身体をコピーするとか、何かいろいろできるし、さらに他の悪い異星人が地球人同士を争わせて漁夫の利を狙っているとか、そもそも地球もひとつの「生命体」であって意志を持っているとか、何かいろいろなトンデモ話が飛び出してくる。「幸福の科学」の教義は、様々な既存宗教の教義を混ぜ合わせたものをベースに、トンデモ科学、SFで味付けをしているので、先述のようなシロモノになるようだ。

★とにもかくにも悪い異星人とつるんでいる悪の皇帝が世界を滅ぼそうとするのを阻止すべく主人公は神の軍団を駆使して戦うわけであるが、そのために、日本神話の女神であるコノハナサクヤ姫と交信、ヤマタノオロチを使役して邪悪な龍を退けたり、神代の英霊や12神将、明王、仁王といった神仏を呼んで地獄の手先を蹴散らしたりと、すさまじくありがたい最強・救世主主人公感が醸し出される。それもそのはずで、制作者は、正真正銘「ホンモノ」であるから、神話的スケールのハイパーバトルは、そんじょそこらのファンタジーアニメなどは比べ物にならない。ましてや、主人公はトップレベルの男性声優・子安武人ボイスで喋るのだ。ありがたさはマックスを振り切れていて、もはや何も言えない。

★悪の皇帝も結局は悲しい被害者で、国家の実験動物として生み出された試験管ベイビーで、愛を知らぬまま飼育され、すぐれた知能と超能力を得ていたものの、世界を憎み何もかもを破滅に導くためにクーデターに及んだのだという。つまりは、「宗教はアヘンだと言った共産主義はヤバいし、そういう思想の元に作られた独裁軍事国家はヤバいよね。あと宇宙ヤバい」って結論なのであった。

★作画にはお布施がふんだんに注ぎ込まれているようで、アニメとしての出来は悪くない。巨大怪獣バトルや、カーチェイスとか白兵の集団戦の作画には妙な良さがある。最終戦は多少違和感があるものの、ファンタジーバトル寄りの部分のCGっぽさは非現実感があってむしろ良い味か。

★何と言うか、正しい楽しみ方を知って楽しむべき、「ありがたい」映画だと思う。