のんchan

思秋期ののんchanのレビュー・感想・評価

思秋期(2010年製作の映画)
3.9
ピーター・マランとオリヴィア・コールマンの演技に目が釘付けになる、唸る程に巧い‼️
暗く切なく辛くどうしようもない感情、負の連鎖...目を背けたくなる映像も...しかし...
人生の折り返し地点をとうに過ぎた男と女の出会いと変化を描いている傑作💫

お互いに重すぎる過去を背負い、心も身体も傷だらけ。もう若い時には戻れない。だからこそ、言葉を超えて解り合えるものがある💞


ジョセフは失業中の男やもめ。酒を飲んでは暴力を振るい、荒れ狂う毎日。妻は病死したが優しい言葉や愛情を伝えられなかった後悔だけが残る日々。すぐにカッとなり感情を爆発させてしまう。ある日、賭けに負け愛犬を蹴り殺してしまう...自分の家族は可愛い愛犬だけだったのに...生きる気力を失い、自暴自棄の生活から抜け出せない、そんな自分を責めている。

ハンナはチャリティショップを営んでいた。とても笑顔が美しく信仰心が強く、初見のジョセフのためにも祈ってくれる優しさがある。ジョセフは頻繁に店を訪れるようになりハンナに惹かれていく。しかしハンナには夫がいた。その夫がとんでもないDVを繰り返していることが解ってくる。
傷ついた心は素直な感情がなかなか湧かず自分の心に塀を作ってしまう。孤独の重さが2人を近づけるとや同時にまた隔ててしまう...

家庭内暴力の深刻さが顔や身体の傷から度合いの凄さを証明している。ハンナの落ち着きのなさや、夫に見せる不安の裏返しのような、とりつくろった微笑みがリアル。ハンナはある晩、決心する。

とりかえしのつかないのが人生だとしても、マイナスだらけの2人が、なんとか人生をやり直そうとするラストに希望が見える✨
ハンナが最後に見せる清々しい表情は、彼女の魂がやっと解放されたことを示すようでマリア様のような強い印象を残す💫


これは万人向けじゃない。
かなり人生の苦難を超えていないと共感は無理だし、暗く地味だけの作品になりがち。
しかし、これが一流の演技⭐️と思える素晴らしいものを観れた。


※イギリス俳優パディ・コンシダインの長編映画監督デビュー作❗️
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