このレビューはネタバレを含みます
「アルゴ、クソ食らえ」
老練な二人の緊張しつつもそれを顔や態度に出さない余裕っぷりが、終始緊張感が張り詰める物語の中でオアシスだったなぁ。
アラン・アーキン演じるレスターが、人質の帰国後のトニーとの電話で、
「カナダは偉い。何故アメリカは何もできないの?」
というウェイトレスの言葉に対して、
「俺が何て言ったと?」
と得意げに語るあたり、めっちゃ気に入ってますやんとw
電話の向こうのトニーの笑い声がまた良くてさ。
あぁ、やり遂げたんだなってね。
「何に関与だ?
我々もニュースを知り、驚いた」
上司のこの言葉もなかなかにイケメン風情が漂っていて好きだったのだけど、
先のウェイトレスの発言と同様に、この言葉からは一般ピーポーでは体験し得ないCIAの功績と苦さを感じた。
失敗したら「国は関与してない」と切り離され、成功しても功績として公になることはない。そして、家族にすら言えない……
トニーが家に帰還した際の奥さんの表情の読めなさには、イランでの出来事とは異なる緊迫感を感じたよね。
安心しているのか、言葉が出ないだけなのか、怒っているのか。
飛行機がイラン領空を超えてアルコールが振る舞われた時、
ヒゲの人がトニーに無言で握手を求めた時、
どちらもじんわり涙が出たけれど、奥さんがトニーを抱きしめた時はそれ以上に泣けた。
ミッション・インポッシブルの「当局は一切感知しないものとする」はヘラヘラ笑いながら観れちゃうのとは大違いw
そして、クリントングッジョブ。
個人的にはベンアフ史上最高にイイ仕事してると感じた作品でした!
実話ベースで史実を大きく捻じ曲げることなくエンタメ大作のように仕上げる手腕。
もちろん後半のギリギリに次ぐギリギリの逃亡劇なんかは特にエンタメを強く感じたので「ここは脚色だろうな」と思う部分は結構あったさw
史実との違いの詳細はWikiにまとまってますが、やはりドラマチックにするための工夫は随所に仕込まれています。
でも史実の本軸には忠実なんです。十分に。
このあたりの塩梅の巧さは、さすが脚色賞を受賞しただけある作品だと感心しきりでしたよ。抑えめのトーンで作ってる点も◎
イーストウッドぐらい史実に沿った作りにすると、やっぱり地味な作りにはなってしまいますから。
このあたりは善し悪しというより、好みでしょうね。