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首領への道 劇場公開版のsyuheiのレビュー・感想・評価

首領への道 劇場公開版(2003年製作の映画)
3.5
2003年の石原興監督作品。UNEXTで前後編に分かれて公開されている。

大阪・十三を中心に勢力を広げる島田組の桜井鉄太郎(清水健太郎)は抗争を機に敵対組織である白虎会の越智俊英(白竜)と兄弟分となる。桜井に"ドンの器"を見出した越智。2人は島田組三代目に据えるべく首領への道を直走る。そして桜井の身代わりに刑務所に入った金沢(中野英雄)の出所が迫る…。

本作はVシネで25本以上から成る一大ヤクザドラマのダイジェスト映画版。そのため描かれるのは金沢の出所間際まで。ただ、Vシネを全て観た知人いわく、主演俳優の薬物逮捕の影響でさんざんな終わり方らしい。原作は村上和彦氏でVシネと同様に本作でも様々な儀式の媒酌人としてカメオ出演している。

一般的にヤクザ映画は男が男に惚れて命を預けるという関係性が物語の基軸となるが、本作は特にこの点が強調されている。桜井と越智はしょっちゅう見つめ合い、相手への信頼を口にし、時にはゴンドラに乗って窮地に駆けつけるという、ほとんど恋愛映画のよう。金沢が出所したら三角関係になること必至。

あくまでダイジェスト版なので劇映画としての評価は難しいが、俳優陣は豪華だし、ヤクザ映画にお約束の銃撃戦や無駄に豪華な演出は楽しめる。一方でシノギの具体的な描写が冒頭の賭場開帳くらいしかないためリアリティには欠けるため、この人たちどうやって生活してるんやろ?と不思議になってくる。

当時は映画と比べて小馬鹿にされた節のあるVシネだが、近年の映画で描かれるヤクザが先細りする苦境に喘ぐ姿ばかりで、いまあらためて観てみるとヤクザの世界にある種の憧憬というかファンタジーを描くことができた時代の豊かな文化的副産物だったのかもしれないなー。あと女性がほとんど出てこない。

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