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声をかくす人のkuuのレビュー・感想・評価

声をかくす人(2011年製作の映画)
3.8
『声をかくす人』映倫区分G.
原題The Conspirator.
製作年2011年。上映時間122分。

※齟齬があり再度投稿失礼致します。

リンカーン大統領暗殺の罪に問われ、米国合衆国政府によって処刑された初めての女性メアリー・ラサットの隠された真実をロバート・レッドフォードがメガホンをとった米国産歴史ドラマ。

南北戦争終結直後の1865年、第16代米国合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが暗殺された。
犯人グループはすぐに捕えられ、犯人一味にアジトを提供したちゅう理由で、下宿屋を営む南部出身の女性メアリー・サラットも逮捕された。
メアリーの弁護を引き受けることになった北軍の英雄フレデリックは、メアリーがある秘密を守るため自ら犠牲になろうとしているのではないかと考えるが。。。

1865年4月14日にリンカーン大統領が観劇中に暗殺された。
1861年にリンカーンが第16代大統領に就任した直後に勃発した南北戦争が、事実上終結した5日後のことやった。
確かに南部の首都リッチモンドは陥落して、南軍のリー軍司令官は降伏した。
しかし、各地でまだ小競り合いが続いていたし、まだ南部では戦争終わったって云えへんかった。
こないな混乱した時期に国家統合の象徴であるリンカーン大統領を失ったってことは、北軍指導層の危機感を募らせた。
政治的不穏感を一掃するためにも、暗殺に関わった者たち全員を極刑にすべきちゅう声が高まったのは当時なら当然の成り行きかな。
捜査の指揮をとったエドウィン・スタントン陸軍長官(ケビン・クライン)は、戦時ちゅう理由で、一般市民を強引に北部の軍事法廷で裁くことにした。
このために犠牲になったんが、犯人らに宿を提供した下宿屋の女主人メアリー・サラット(ロビン・ライト)やった。
一般市民は軍事以外の罪であれば、通常の法廷で裁かれるべきやったのに。
彼女は米国で初めて死刑になった、実在した女性として知られている。 
翌1866年には最高裁が戦時でも民間人を軍事裁判にかけることを禁じている。
メアリー・サラットは混乱期の政治状況下で犠牲になった悲運の女性として知られている。
この裁判の実相はどうやったのか。
ロバート・レッドフォードはその理不尽な裁判劇を忠実に再現してると無知ながら小生は思います。
今作品は南部と北部を合わせて62万人もの死者を出した南北戦争の悲劇をあぶり出しているって云えるかな。
文字通りの総力戦で、女性も動員されたし、北部からも南部からも何千人ちゅう女性看護師が従軍し、男装の女性兵士も参戦したといわれる。
また、戦争を後方支援しつつ、家庭を守るのが女性の責務と考えられた。
惨い時代です。
メアリーは息子のために沈黙を守ったけど、息子には捨てられる形になった。
処刑後に現れた息子は無罪になった。
フレデリックと会った息子は、フレデリックこそが本当の息子やといい、メアリー がフレデリックに預けたネックレスをフレデリックに渡す。
映画はこのフレデリックに米国の良心を投影しているんじゃないかな。
彼は裁判の後、法曹界を去り、ワシントン・ポスト紙の初代社会部部長になったけど、1878年、40歳前に心臓病で亡くなったそうです。
リンカーン暗殺事件にはさまざまな陰謀説もあるんやけど、監督は史実に残された資料に沿って正確な作品をつくることに集中しているのは作品を通して伝わってくる。
作中の会話の大部分は、裁判の記録から直接セリフにしたそうです。
当時、写真が発明され、記録があったことも幸いしたんやろなぁ。
女性たちが残した日記や手紙も含め、広範囲の膨大なリサーチが行われ、衣装とか家具は、勿論のこと、建物や照明も当時を彷彿とさせてるし、当時のワシントンの街の再現も興味深かった。
レッドフォード監督らしい良心的な映画でした。
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