チッコーネ

桃さんのしあわせのチッコーネのレビュー・感想・評価

桃さんのしあわせ(2011年製作の映画)
3.5
香港には珍しくフランス映画のように朴訥とした雰囲気、女流監督による佳作だった。
中華系諸国では「子が老いた親の面倒を見る」という伝統が強固だと思っていたのだが、国際色豊かな香港では例外も多いこと、そして日本同様、高齢化社会の介護問題が存在していることが、本作でよくわかる。
また共産主義の大陸では建前上あり得ない『住み込みで、ひとつの家に数十年仕えるメイド』という生き方がかつての香港に存在していたことも、本作で示されていた。
労働そのものに対する意識の変化、そして返還という時代の流れの中で消えゆくある種の女性、その生き様がやさしくノスタルジックな視点で描かれていく。

各国で主演女優賞をさらったディニー・イップは、80年代にジャッキー・チェーン映画に出演した経歴もあり、キャリア充分。
映画祭会場では華やかなスタイリングに身を包み、本作のキャラクターとは全くの別人といった趣…、それだけ確かな演技力を持っているのだ。

傍流エピソードで、大陸と香港の映画共同制作現場の様子が戯画化されているのは、結構興味深い。