シネフィル野郎

演劇1のシネフィル野郎のレビュー・感想・評価

演劇1(2012年製作の映画)
3.6
劇作家/演出家の平田オリザとその劇団「青年団」を追ったドキュメンタリー映画『演劇1』と『演劇2』を観賞。二部作トータルの上映時間が5時間42分という苦行の如き長丁場なのに編集の妙かそこまでの長さは感じなかった。《観察映画》なるドキュメンタリーの手法を標榜してきた想田和弘監督の『選挙』や『精神』に続くシリーズだが、予断や先入観を排するためナレーションや音楽を使わず撮影や編集といった作業もほぼ監督一人で行ってるらしい。まず『演劇1』の方は平田オリザと劇団員によるDIY精神溢れる活動のイントロダクション的な内容となっており、続く『演劇2』の方では資金繰りための実績作りや国会議員との関わりといった政治的な側面にも踏み込んでいる。

まあ必要以上に被写体を持ち上げたりしないストイックな撮り方には好感が持てるんだがインタビューとか読むと、結局は“芸術活動に貢献してる俺達をもっと優遇しろ”と言ってるだけみたいに思えてきてなんだかなぁという感じ。大多数の人間にとって好きでやってる事なんて趣味の範疇なんだからそれが商売にならんのは当たり前の話なのに、カッコつけて「芸術は資本主義的な価値観では計れない」みたいな事を言いながら実情はお上の助成金頼りとはね。それが過小評価で収入と見合わないと言うなら結局は伝える側の努力が足りてないんじゃねって話になってくるし、それをこんな長ったらしい映画に仕立て上げたりしてるから敷居が高いと思われるんじゃねって話にもなってくる。

しかしリベラル気取りの自称芸術家にありがちな何でも他へ責任を転嫁する選民意識丸出しの物言いにはウンザリ。あと最近の想田さんは政治的に偏った発言が多すぎるので作品がもはや《観察映画》として機能してない気もする。これならまだマイケル・ムーアとかの方がエンターテイメント方向に振り切れてる分はいくらか潔いかもしれんね。いつも大衆を見下して説教垂れる癖に物乞いの真似事とはさすが意識高い系の進歩的文化人様は一味違いますなぁ。もうこうなったら開き直って《河原乞食プロパガンダ映画》みたいな新興ジャンルでも提唱されてみてはいかが?
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