マルケス

荒野の誓いのマルケスのレビュー・感想・評価

荒野の誓い(2017年製作の映画)
4.5
スコット・クーパー監督らしい作品だった。前々作『ファーナス』よりさらに深く突き詰めた人間ドラマ。設定からいえば西部劇だが、通底するテーマはむしろ現代社会にこそ説得力を持つ。

内省的な物語。感情は相対する誰かではなく、内なる自分に向けられる。
「相手を赦せるか」「自分は赦されるのか」
誰もがどちらかを、または両方を抱え自らに問い続ける。時に死の淵に迷い込みながら恩讐を越えることができるのか。原題『Hostiles (敵)』の敵が意味するもの。
ジョー(クリスチャン・ベイル)が銃を前に一人叫ぶシーンの凄み。声がないのに叫び声が聞こえる。マックス・リヒターの重厚なスコアが葬送曲のように響く。

牧場主へのジョーの行動の是非は難しい。銃撃戦になる前に収める術がなかったのかと思ってしまう。『ファーナス』のラストもそうだが、クーパー監督は曖昧に濁すことを良しとしない。
俳優さん全員(名前を全部書きたいくらい)、撮影、音楽、全てが素晴らしかった。そして、クリスチャン・ベイルという俳優がとてつもなく好きだ。

【自分用メモ】
ロザリーの独白
「時々 死という終局を羨望する 死の確実性を
 心が弱るとその羨望がまとわりつく
 神の試練に慣れることはない」
マルケス

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